本記事では岡潔、小林秀雄 著『人間の建設』(新潮文庫)を読んだ感想を述べる。
この本をまだ読んだことがない人が読むかどうかを判断する材料になれば幸いである。
どんな本か
特にテーマに縛られることなく、酒、教育、数学などについて語られている。
中身はとんでもなく頭が良く、知識も豊富な人たちの雑談というかんじだ。
そういった人たちは様々な知識を一段階抽象度が高いレベルで、ジャンルの異なる物事にも共通点を見出しながら理解しているものだと思う。
この対談集では心の動きという共通点が多様なテーマの中で顔を出す。
なぜ読んだか
どこかの誰かのYouTube(忘れてしまった)で人生観が変わるくらいの名著だと言っていたので、どれほどすごいのだろうと気になって読んだ。
岡潔が数学の多変量解析の分野ですごい人だとは知っていた。
ただし業績について詳しくは知らない。
小林秀雄にいたっては名前を聞いたことがあるくらいで、著書の一つも読んだことがない。
感想
私には人生観が変わるほどのインパクトは与えなかったが、それはこの本が良い本ではないことを意味しない。そこまでのインパクトを与える本にはなかなか出会えないものだと思うが、もしかしたら普段読み慣れているような、物事を解説する類の本ではないからかもしれない。2人が言いたいことを理解できていない感触が残ったことは確かだ。
それでもところどころで「なるほど」「たしかに」と感じられる言葉があった。
私に特に響いた箇所はおおよそ以下のような意味合いだった。
・いくら理路整然と説明したとて人は感情が納得しないと本当には納得しない。
・20代で決まったやりたいことの方向性はその後の人生においても大きくは変わらない。
1点目は要は「言っていることはわかるんだけども...」というやつだなと思った。
私自身が誰かの言っていることに対して感じたことがあるし、反対に私が誰かに説明しているときに相手が感じているだろうと思う。ついつい人に何かを伝えるときには理路整然と説明することを重視してしまうが、人に納得してもらうためには感情を動かさないといけない。仕事でもプライベートでも人を納得させたい場面はいくらでも訪れるので心に留めておきたい。
2点目については私自身もあるときに感じたことがある。私は結局、自然科学や数学・情報といったいわゆる理科系の領域に属する事柄に一番心が惹かれる。興味の範囲は成長とともに年々広がっているようで実のところそんなに大きく離れていない。文系分野の学問や芸術などに対して面白いと思うことも美しいと感じることもあるが、それらに没頭して長い時間を費やしている自分は想像がつかない。
今後、より色々な経験を積んだ上でもう一度読み直したら私にも人生観が変わるほどのインパクトを感じるかもしれない。そう感じさせるような一冊だったと言える。
